岡田:有効性や安全性、さらに使用法の検証がきちんとされて、この冬に間に合って外来治療で使えると良いのですが。現在は一部の大きな病院でしか使えていません。承認してもらえばクリニックでも出せる可能性が広がる。飲み方をきちんと守るのは大前提です。

林:なるほど。それはすごく重要なことですね。

岡田:60歳以上で持病がある人は、あまたいるわけですよ。そういう人を重症化させない対策を打ってほしいというのが私の提言です。

林:これから秋冬に向かって皆さん考えなきゃいけないのに、先生から見てると、日本はノンキすぎるという感じですか。

岡田:確かに今は気持ちが緩んでいるように感じますが、今まで不安がずっとつきまとっていて緊張していたわけです。だから夏ぐらいは少しホッとしてもよかったかも。でも、行政はこの時期に医療体制を冬に向けて必死に準備すべきなんです。

林:私、また社交が始まっちゃって、毎日のように友達とごはん食べてますよ。もちろん気を付けてはいますけど……。

岡田:小池都知事が紹介してましたけど、海外では「ハンマー&ダンス」ということが言われてると。感染者が増えてきたらたたいて規制を厳しくする。患者さんが少なくなってきたら、規制を緩和して経済を回す。感染を抑えるだけではなくて、経済も守らなければいけない。相反する二つのことに、国民の生命健康と経済のバランスを考えて、「ハンマー&ダンス」の落としどころをどういうところにするか。経済と感染症をバランスよく判断しなければいけないのが政治ということだと思います。政府はどこに目標を見据えているのか、心配だし不安です。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

【岡田晴恵「『コロナの女王』は嫌だった」 コロナ禍のテレビ出演語る】へ続く

岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学(現・慶応義塾大学薬学部)大学院薬学研究科修士課程修了、順天堂大学大学院医学研究科博士課程中退、医学博士。厚生労働省国立感染症研究所研究員、アレクサンダー・フォン・フンボルト奨励研究員、日本経済団体連合会21世紀政策研究所シニア・アソシエイトなどを経て、現在、白鴎大学教授。専門は感染免疫学、ワクチン学。著書に『人類vs感染症』(岩波ジュニア新書)、『感染爆発にそなえる──新型インフルエンザと新型コロナ』(共著、岩波書店)など。

週刊朝日  2020年10月30日号より抜粋