直木賞作家を“へなへな”に苦しませる“ステレオ残酷物語” (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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直木賞作家を“へなへな”に苦しませる“ステレオ残酷物語”

連載「出たとこ勝負」

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黒川博行週刊朝日#黒川博行
黒川博行・作家 (c)朝日新聞社

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※写真はイメージです (GettyImages)

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 ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回は、壊れたステレオと地下室について。

*  *  *
 麻雀部屋のステレオが壊れた。CDが作動しない。アンプとデッキを近くの家電量販店に持っていったら、2004年の生産品なので、メーカーに送っても部品がないから修理不能だといわれた。メーカーとはそういうものなのだろうか。量販店に、古い修理品は受け付けるなと圧力をかけているのではあるまいか。納得できないので街の電器店に持っていったら、そこでも同じように断られた。いまどきの電気製品は修理するより買い換えるようにできているらしい。

 わたしは考えた。地下室にステレオがある、と。

 我が家は2000年に中古で買った。前の所有者は建築会社の経営者で、地下室は二十畳ほどの広さがあり、物置として使われていた。03年、わたしは一念発起し、地下室を改装して書庫兼ホームシアター兼オーディオルームにした。せっせとプロジェクターやオーディオ機器を揃(そろ)え、ロックのライブDVDや映画カセットを買ってきて(当時、日本橋の電気街に行くとレンタル落ちのカセットが百円で売られていた)、ご機嫌で観(み)たものだが、それも二、三年で飽きた(わたしはなにごともすぐ熱が冷める)。オーディオルームは放置され、やがてよめはんが画集や自作の絵や額を持ち込み、哀れ、元の物置になってしまったのだった──。

 わたしは久々に地下室に降りた。ガラス扉の割れた古い書棚と、なぜかしらんよめはんの洋服タンスが部屋の真ん中に鎮座し、プロジェクターは部屋の隅に追いやられ、スクリーンはたたまれて床にころがっている。よめはんの画集やわたしの本が棚から溢(あふ)れ、そこここに絵と額の段ボール箱が置かれて、埃(ほこり)をかぶったオーディオ機器(アンプやスピーカーはやたら重い)を運び出そうにも、そのための動線がない。

 わたしはへなへなとなった。この足の踏み場もない部屋を片付けるてな無謀なことはやめるか──。


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