災害時のホテル避難は今後増えると思いました。今回は幸いにも被害がありませんでしたが、ホテルがどこまで避難者に対応できるか、課題もあります」(同)

 長崎県は5月、県旅館ホテル生活衛生同業組合と災害時における協定を結んだ。とくに配慮が必要となる高齢者や障害者らに宿泊施設を提供することなどが目的。同様の協定は全国31都道府県で締結済みだ(4月現在)。

 コロナ禍で注目された「ホテル避難」について、東京大学総合防災情報研究センターの田中淳特任教授は、台風のように事前の避難行動ができる場合は有効だとする。

「過去には、『津波警報が出たのでデパート上階のレストランに家族全員で食事に行った』『避難訓練も兼ねてホテルに両親を連れていった』というものがあり、こうした避難の発想はあってもいい」

 ただし、台風通過のような一時的な避難と、災害発生後の生活避難では分けて考える必要があるとも指摘。「1泊程度であれば金銭負担できるかもしれませんが、長期間だと負担が大きくなります。そもそも小学校などの避難はスペース不足。被災という精神的につらい体験をされている方が、布団1枚の空間で雑魚寝生活を強いられるべきではありません。避難所の環境を真剣に考える時期に来ているのではないでしょうか」

(吉川明子)

週刊朝日  2020年9月25日号