冷えたビールに枝豆、浴衣姿で寝転んで野球を見るのは、かつての日本のサラリーマンの典型。よくぞ男に生まれけるという一瞬なのだそうだ。

「おうちにいましょう」というコロナの夏、犬を抱いて優雅に椅子に腰かけ紅茶を楽しむ首相が辞任して、今度はだだちゃ豆の味のわかる人、庶民の痛みがわかる人になって欲しいと思うのだが。たまたまこの原稿を書いている横のテレビで自民党総裁選に立候補する菅官房長官の記者会見が行われている。彼は秋田の農家の出身で、たたき上げの人生だという。

 今年は最上川が氾濫して、船に乗る客がめっきり減ったそうな。

 上流は被害が報じられたが下流は無事だという。それでも風評被害とやらで、いまだにコロナの影響も含めて客足がもどらない。

 今年は暑さも含め、ほんとうに特別な夏であった。

下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『人間の品性』ほか多数

※週刊朝日2020年9月18日号

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下重暁子

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下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中

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