石垣教授によると、水が入ってこない出入り口から脱出するのが重要だ。地上で10センチの浸水でも、水が階段に流れ込んで加速すれば、子供や高齢者が階段を上るのは危ない。

 地下街の出入り口にあるガラス扉にも注意が必要だ。消防法の関係で外開きになっており、そこが30センチも浸水すると中から開けるのは困難になる。

「階段で足をすくわれて転倒すると、どこまでも流されてしまうこともある。また、ガラス扉は40、50センチも浸水すると、水圧で砕け散ることもある。看板などが流れてくることもあり、危険は多い」

 防災の研究者とデザイナーらでつくるNPO法人「防災デザイン研究会」の担当者は、「生き残りたければ早く地上に出るべきだ」と助言する。浸水後に停電が起きると、エレベーターやエスカレーターが止まるリスクがある。暗闇の中で避難する可能性もある。

「地下にいると地上がどうなっているのか把握しにくい。初動が遅れて避難が困難になるリスクもある。博多駅周辺で浸水した際には、逃げ遅れて亡くなった人もいる。こうしたことを教訓とするべきだ」

(本誌・吉崎洋夫、松岡瑛理)

週刊朝日  2020年9月18日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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