浸水で一番心配なのは、やはり地下鉄だ。東京23区では日比谷線の東銀座駅、有楽町線の新富町駅で5~10メートル、新宿線の大島駅、浅草線の宝町駅、千代田線の北綾瀬駅で3~5メートル、大江戸線の築地市場駅や銀座線の浅草駅、日比谷線の秋葉原駅で0.5~3メートルとなっている。

 特に目立つのは墨田、江東、足立、江戸川の江東5区(ほかは葛飾)の駅だ。荒川、隅田川、江戸川などが流れ、海抜ゼロメートル地帯も広がる。東西線や千代田線、日比谷線などが走っている。

 中央、台東、荒川、北、板橋の各区でも、荒川・隅田川の近くを走る路線で被害が予想される。

 大阪市では、四つ橋線の西梅田駅、千日前線の玉川駅が最大5メートル、御堂筋線の新大阪駅、梅田駅で同3メートルなどとなっている。淀川、大和川、神崎川などが流れ、海抜ゼロメートル地帯も広がる。淀川沿いを走る谷町線や、淀川をまたぐ御堂筋線、今里筋線で多くの駅が水没する。大阪湾近くを走る中央線やニュートラムの駅では津波による浸水リスクがある。

「地下鉄網が被害を拡大させる恐れがあります」

 こう言うのは『首都水没』の著書があるリバーフロント研究所技術審議役の土屋信行さんだ。2009年、国の中央防災会議は、こんなシミュレーションを公表した。

 200年に一度の豪雨が降り、東京都北区志茂で荒川の堤防が決壊。11分後に南北線の赤羽岩淵駅に水が到達し、大量の水が地下へ流れ込む。約4時間後には千代田線の町屋駅、8時間後には日比谷線の入谷駅からも流入する。東京駅と銀座駅では、地下鉄を通じて地表よりも6時間も早く水が到達。大手町駅でも7時間早く水が出る。霞ケ関駅や赤坂駅、六本木駅では地上に水は来ないが、駅内で浸水する。

 最終的には17路線97駅が浸水し、そのうち81駅で駅の改札などの部分が水でいっぱいとなる“水没状態”に。特に一番深いところを走る大江戸線は、最初に水没する──。

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