大坂なおみ選手(c)朝日新聞社
大坂なおみ選手(c)朝日新聞社

「私はアスリートである前に1人の黒人女性。テニスよりももっと大事な問題がある」

 今やテニスの試合とともに、その言動にも世界の注目が集まる大坂なおみ。現在、ニューヨークで開かれている全米オープンでは、5年連続の3回戦進出を決めた。試合内容も圧巻だったが、初戦、2回戦とも登場の際に、人種差別に抗議するために着けてきたマスクが目を引いた。

 ただでさえ体力、精神力ともに他の大会以上に必要な四大大会。試合以外のことにも気を配りながら勝ち続けることは並大抵のことではない。それでも行動することを選んだ大坂の思いとは何か。

 テニスライターの内田暁さんは大坂の精神面での成長だという。

「2018年に全米、翌年に全豪で優勝し、世界ランクも1位になった19年3月ごろから、大坂選手はロールモデルになるような選手にならなくてはダメだという思いが強くなってきました。大会に出ると子どもたちが大坂選手の周りに集まってくるような憧れの存在になったことを自覚したようです。そのころから自分の社会的役割についても考えるようになったのだと思います」(内田さん)

 たとえば、全米優勝後のインタビューで、自身のアイデンティティーについて聞かれたときは「私は私。両方の文化を持っている」と答え、全豪後にも「私の国籍や民族を聞くのではなく、プレーに注目してほしい」と訴えるにとどまっている。

 しかし、今年5月に米ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドさんが警察官に死亡させられた事件以降は、この問題に積極的にコミットし始める。5月30日には「あなたに起こっていないからといって、まったく起こっていないということではない」とツイート。音楽業界の呼びかけで6月2日に行われた「ブラック・フライデー」には真っ黒の画面を投稿してもいる。

 また、ロサンゼルスで行われた抗議デモに、恋人とうわさされるラッパーと参加もし、メディアのインタビューに「私は声を上げる。抗議活動の価値を信じているし、私の立場を使って変化を促したい」とも語っている。

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「ブラック」で「アジアン」