「世界では40億人近い人々が水の乏しい地域で生活をしており、このような地域ではすでに年間の水需要が供給できる水の量を上回っています。また、この数字は2050年までに50億人に達すると予想されています」

 日本ではいまひとつピンとこないかもしれないが、水資源の有効活用は世界的に大きな課題。洗浄水削減はメーカーにとっても成長の鍵だ。

 もちろん、節電にも努めている。トイレの使用頻度を記憶し、使用が少ない時間帯は便座の温度を自動的に下げる「おまかせ節電」。使用するときだけ瞬時に便座を温める「瞬間暖房便座」……。まさにハイテクの塊である。

 これらを踏まえて住宅専門誌デスクがこう言う。

「TOTOが業界で一目置かれるのは、技術力だけではないんです。地道な営業努力も見逃せません。例えば、初代ウォシュレットの発売当初、得意先の水道工事店に設置して使ってもらい、快適性を口コミで広めました。地味なPR手法ですが、SNSのない時代には効果的。また他社に先駆けて単なる器具取り換えにとどまらず、新しい生活スタイルの提案にまで踏み込んだ“リモデル(リフォーム)”に熱心に取り組んでもいます。高機能、プラス足で稼ぐ営業力。それがロングセラー、トップシェアの秘密ではないでしょうか?」

 日本人ならではの感性と新機能で独自の進化を遂げるウォシュレット。大いなる「ガラパゴス」が、巨大な中国市場、成長著しい東南アジア、さらに市場開拓に試行錯誤中の欧米で飛躍するに違いない。(ライター・高鍬真之)

※「ウォシュレット」はTOTO株式会社の登録商標です。

週刊朝日  2020年9月11日号より抜粋