中森自身も試合後の取材で「実力が足りないんじゃないかと思った」と納得いかない様子だったが、渡辺氏が「並の選手とは持っているものが違う」と語るように、潜在能力の高さは間違いない。今後のさらなる成長を期待したいところだ。

 智弁和歌山の小林樹斗も好印象を残した一人だ。

「交流試合での最速は151キロで球威は抜群。自分の球に絶対の自信を持っているように見えた。力を入れすぎずに腕を振り、それでも手が出ないような快速球を投げる“コツ”をつかんだように思う」(安倍氏)

 投手の活躍が目立った一方、打者は総じて苦戦を強いられた。大会中の本塁打は3本のみ(うち1本はランニング本塁打)。4点以内の試合が16試合中10試合とロースコアが多かった。明徳義塾(高知)の監督で18歳以下日本代表の監督も務める馬淵史郎氏はこう振り返る。

「これだけ本塁打が出ない大会はない。コロナの影響で2カ月も試合をしておらず、投手の生きた球を見られていないのは大きい。審判員に聞いたら、インパクト時のスイングは一様に鈍く、音も違うと。『投高打低』の大会だった」

 渡辺氏も同様の感想だ。

「強豪校はさすがというべきか鋭い打球を飛ばしてはいましたが、スタンドに入ったと思う打球が入らなかったり野手の正面をついたりして、長打が出なかった。練習の幅が制限されてしまった影響は大きいと感じました」

 そんな中で目に留まった野手として挙げられたのは、守備面で評価された選手たちだ。

「履正社(大阪)の関本勇輔君は肩が素晴らしかったね。体が大きいのに俊敏で二盗を何度も刺した。そのフィールディングには目を見張りました」(渡辺氏)

「東海大相模(神奈川)の遊撃手の山村崇嘉君は三塁の守備もこなして、どこを守らせても一級品。送球も素早く、昨年まで一塁手だった選手が、短期間でこれだけ上手な遊撃手になったのは本当にびっくり。こんな選手は今まで見たことがない」(安倍氏)

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