一方のヒョンビンも努力家で知られる。ピアノを弾くシーンについて、イ氏は「弾くまねだけでいい」と言ったが、ヒョンビンのほうから「練習して弾きたい」と申し出て、撮影に入るまで2カ月間練習してきたという。ドラマでは音は整えているが、弾いているのは本当にヒョンビンだ。元ピアニストの軍人という役がそれらしく見えるのも、地道な努力の賜物だった。

 ジョンヒョクの部下の一人、ピョ・チスを演じたヤン・ギョンウォンは「実際にヒョンビンさんは中隊長(ジョンヒョク)みたいな面がある。何でもやってくれそうな頼もしさ。落ち着いた雰囲気ながら、ふざけたりもして。そのふざけるのも相手の役者の緊張を解くためだったり。本当にかっこいい人」と絶賛した。「初対面の時はかっこよすぎて目を合わせられなかった」と言う。

 一方、韓国ではピョ・チス人気も熱かった。イ氏も「最も北朝鮮の言葉が自然だった」と話していたが、ミュージカルで以前、北朝鮮の軍人役を演じたことがあり、訓練ができていたという。何よりセリと憎まれ口をたたき合うのが楽しかった。「ピョ・チスが強がりなのは、自分を守るため。傷つきたくないから。そういう不器用なキャラクターが視聴者に愛されたんだと思う」とヤン・ギョンウォン。挙げればきりがないが、主役から脇役に至るまで、役者の演技力もさることながらキャラクター設定のきめ細かさも行き届いたドラマだった。(在ソウル・成川彩)

週刊朝日  2020年7月31日号