「当初は予算を地域ごとに割り振るような話もあったが、なくなってしまった。これでは大きな観光地以外の地域に勝ち目はないですよ。政府はGDPのV字回復だけを考えて、広く地域を支援するところまで考えが及んでいない」

 青森県むつ市の宮下宗一郎市長は「感染者がV字に増加する」と声を荒らげる。市には感染症病床が4床しかなく、軽症者を受け入れる施設もない。高齢化率も高く、感染者を入れるわけにはいかないというのだ。

「現状では、Go Toは感染者をどれだけ受け入れられるかで恩恵の不平等が生じる。いまやるべきではない」(宮下市長)

 一方、元観光庁長官で大阪観光局理事長の溝畑宏氏は、Go To推進の立場だ。サービス業の中小企業は壊滅的状況にあり、感染拡大防止と経済再生を同時に進めなくてはならないという。

「旅行者、観光関係者、地域住民がやるべき対策を取りながら経済を動かしていく。医療体制の問題などで来てほしくない、というのであれば、各地域で判断してそう言えばいいと思います。むつ市は『不平等』と言うのではなく、観光ではない他の産業でもうければいい。それを考えるのが首長の仕事だと思います」

 様々な議論が巻き起こるGo To。はたして国民はどう動くのだろうか。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2020年7月31日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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