不協和音が響く菅義偉官房長官(左)と小池百合子東京都知事。責任のなすりつけ合いにも見えるが……? (c)朝日新聞社
不協和音が響く菅義偉官房長官(左)と小池百合子東京都知事。責任のなすりつけ合いにも見えるが……? (c)朝日新聞社

「Go To トラベルキャンペーン」をめぐり様々な思惑が入り乱れている。国、地方、観光業界……。まずは菅義偉官房長官と小池百合子東京都知事の因縁から。

「国がよーくご判断されたことなんでしょう」

 7月16日夜、小池氏は記者団の取材に対し、Go Toの対象から急遽、東京が外されたことについて皮肉ともとれる答え方をした。

 もともと政府は22日から全国一律で始めるとしていたが、その間に東京では感染者数が大幅に増加。小池氏は再考を求めていたが、これに対し菅氏は「(延期は)全く考えていない」と真っ向から否定していた。

 菅氏の小池氏嫌いは有名だ。2016年に小池氏が知事になって以降、「小池さんは自分が目立つことしか考えない」「小池都政なんてパフォーマンスだけ」などと周囲に語ってきた。とはいえ、今回は「小池憎し」でGo Toを進めているわけではないようだ。

 菅氏は観光政策の旗振り役の一人。IRに力を入れ、東京五輪も観光業界の意向をくみながら取り組んできた。しかし、コロナ禍で五輪は延期、外国人観光客も消え、観光業界は大打撃を受けている。永田町に詳しい経済団体幹部は言う。

「菅さんの思い入れが強かった。22日に早めたのも連休前に旅行需要を喚起するためです。自分たちの仲間にお金を突っ込むことが先行している。国民は、いつまでキャンペーンが続くのか、どうやって利用するのかもはっきりと理解してないのに突き進んでいるのはそのためです」

 自民党の二階俊博幹事長の存在も見え隠れする。二階氏は運輸相(現国土交通相)、経済産業相を歴任し、観光業界のドンとも言われる。Go Toの事務局を務める団体の一つである全国旅行業協会の会長でもある。別の経済団体幹部は「二階さんのメンツにかけて強力に推進していたのでしょう」と話す。

 地方からも声があがる。九州の商工会議所会頭は、北海道や沖縄、福岡、京都といった、これまでも“強者”とされてきた観光地が勝つような仕組みになっているという。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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