「演技の難しさはどの国でやっても同じです。いまも常に悩んでいます。私の表現が作品の世界観とマッチしているか? どう演じたらよいものが出てくるのか? でも完璧、ということにはこだわらなくなった。完璧とは言葉としては存在していますが、実際には存在していないものではないか、と気づいたのです。少しは成長したのかな、と思います」
実は日本での活動を意識したのはアメリカ留学時代だ。韓国出身で日本マニアだった友人の影響でJ-POPに目覚めたことがきっかけだという。
「最初に買ったCDは安室奈美恵さんです。嵐やケミストリー、X JAPANにもハマりました。日本の小説も読み始めて、夏目漱石や太宰治や遠藤周作を読んで『いつか日本で仕事をしたい!』と思ったんです。プライベートでも一人で日本に来ていました。代官山の蔦屋書店によく行きました」
どこにいても、自分次第で物事は変わる。何にでもなじめる、柔軟性のある役者になりたい、という。
「俳優は作品とキャラクターによって、自分が変化しないといけない仕事です。そして演じるときは、自信を持ってやるべきだと思っている。『このキャラクターに関しては私が一番知っている!』という気持ちで自信を持ってのぞまないと、表現したいものが出てこないと思うのです。日常生活では何事にも自信がないのですが(笑)」
まじめな努力家。普段の顔はどうなのだろう?
「普段はけっこう、いや、かなり『ボーッ』としている感じです。趣味といえば散歩と本屋さんに行くことくらい。最近買った本は村上春樹さんの『猫を棄てる』。絵が多いし、このくらいなら読めるかな?と」
今後も日本と韓国を行き来しながら、仕事をしていく予定だ。
「日本アカデミー賞という大きな賞をいただきましたし、日本でいろいろな役に挑戦したい。ただ、いつかチャンスがあったら、ハリウッドでも演技をしてみたいと思っています」
(中村千晶)
※週刊朝日 2020年7月24日号より抜粋

