今の時代は150キロを超える球を投げても打者は捉える。その日3回目の対戦となれば、打者は投手の球威や、変化球のキレなどにも目が慣れてアジャストしてくる。そんな相手を上回るには、1、2巡目の戦いでしっかりとその日の自分の状態と打者のタイミングを頭に入れておかないといけない。どこかに1球、えさをまくことも必要になる。もちろん、今何点勝っているのか、1点でも与えてはいけない状態なのか、で慎重の度合いも異なる。ただ、甘いコースに投げて一発……といった状況は避けなければいけない。前述したとおり、その一発が3戦目以降に打者の状態に影響を与える可能性もある。

 高橋光、今井ともにどう考えているのだろうか。「最低7回」と考えるか「全試合完投する」と考えるかでも変わる。勝てる投手になりたいなら、勝敗を決するまでマウンドに立ち続ける投手にならないといけない。彼らも22、23歳となってきた。球団を背負うエースとなれるかどうかは、ここ1、2年が勝負になる。

 私が西武監督時代の松坂大輔は、試合が決するまで投げさせたし、本人も代わろうとしなかった。そんな投手にならないと。

週刊朝日  2020年7月17日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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