小池百合子氏はこの先、何を見据えているのだろうか/(c)朝日新聞社
小池百合子氏はこの先、何を見据えているのだろうか/(c)朝日新聞社

 「女帝」の一人舞台だった。最初から最後まで小池百合子氏の独走状態だった都知事選。コロナ禍という特殊な状況下とはいえ、ほとんど「戦い」にはなっていなかった。

「テレビは4年前、大騒ぎして連日連夜、都知事選を報じていました。ところが今回は扱いが小さかった。東京都を誰に任せるかという重要なことなのに、テレビがもっと率先して扱うべき話題だったと思います」

 メディアの都知事選の報じ方についてこう指摘するのは政治ジャーナリストの角谷浩一氏。

 一方、必ず報道するニュースでコロナを扱えば、必然的に小池氏がテレビに出て発言することにもなる。露出にもつながり、有利だったのは否めない。

 さらに小池氏は密を避けるため、基本的には街頭に立たない「オンライン選挙」。リモート対応の討論会もあった。もともと、テレビのニュースキャスターの小池氏にとってみれば、アウェーではなく「ホーム」の戦いとなった。

 これまでに大きな金銭スキャンダルが出なかったことが大きいとの見方もある。猪瀬直樹氏や舛添要一氏が都知事のとき、金銭スキャンダルになって辞めたため、小池氏は「カネ」には気をつけているようだ。いくつかのスキャンダルはあったものの、大きな事態には発展していない。しかも小池氏の給料は就任当初から現在まで半額だ。

「都知事の給料は、本来は約145万円(月額)なのですが、条例により半額の約72万円になっております。諸手当も付きますがそれも半額。小池知事の年収は今年4月1日時点で、約1478万円です」(都総務局)

 立憲民主党の都連関係者はこんな話をする。

「東京アラートにしても、都知事選の告示が近くなって解除されました。アラート中では他の候補者は身動きが取れず、準備もろくろくできなかったはず」

 小池氏の作戦勝ちだというのだ。

 とはいえ、ふがいない野党に、都民の目がほとんど向いていなかったことも確かだろう。結局、統一候補すら立てることができなかった。共産党は宇都宮健児氏を支援したはずなのに、世論調査では共産党支持者の2割は小池氏に投票すると答えたという。
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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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