小池氏にとって、都知事選での余裕な要因はいくらでも出てくるが、これからの都政運営は厳しい道のりになりそうだ。ひっぱくした財政、築地市場の跡地問題、江東区へのカジノ誘致計画、そして五輪関連……。まさに、「デスロード」が待ち受けている。

 特に財政面ではコロナの休業補償に、都の貯金とも言える財政調整基金9300億円のほとんどを使い、残りは800億円くらいとなっている。築地市場の問題などで、小池氏を近くで見てきた元都中央卸売市場次長の澤章氏はこう話す。

お金があれば色々なイベントを計画できるんですが、それもやりにくい。今後4年間は、都知事は緊縮財政のもとで、かなり大ナタを振るうことになる。小池さんにとっては辛いと思いますよ」

 都議の上田令子氏(自由を守る会)は、小池氏の広告費の使い方を調べているという。

「貯金を使い果たしたら、本来は出費を抑えなければいけないものなのに、あの湯水のような広告費の使い方。コロナ対策に総額1兆円超の補正予算を計上し、隠れて不要不急のデジタル事業等への新しいばらまきを潜ませていることも精査されていくと思います」

 都政運営と同時に気になるのは、小池氏自身の今後だ。3年前、野党の「希望の党」代表を務めた。都知事は踏み台で、狙っているのは国政復帰、そして「総理の椅子」とまで言われていたが、国政に返り咲くという可能性はないのか。

 前出の澤氏はこんな印象を持ったという。

「小池さんは本質的に都政で何かをやりたいということは多分ないです。そういうことよりも、自分というブランドをどこまで高みに持っていけるかということなんじゃないですかね」

 前出の角谷氏が話す。

「都知事だった石原慎太郎氏の4期目とダブリます。石原氏は4期目の途中1年半で『オレは国政に出る』といって急に辞めたんです。副知事だった猪瀬さんに任せれば大丈夫だと言って『太陽の党』を結党し、国政に復帰しました。小池さんも、財政破綻(ルビ/はたん)すれすれの状態の都政を途中で投げ出す可能性はあると、政界ではささやかれています」(角谷氏)

(本誌・上田耕司)

※週刊朝日7月17日号から抜粋

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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