昨年7月にアルマトイであった、テンさんを追悼するアイスショー「Denis Friend’s Show」に出演したプロフィギュアスケーター、無良崇人さんは、こう語る。

「デニスが元々やりたかったこと、それはカザフスタンで次の世代の選手を育て、母国でスケートを盛り上げていくことです。それを自分も知っていただけに、(今回のアカデミー設立で)その形が作られてよかったと思います。これはカザフスタンだけでなく世界的にもすばらしいことだと思います。ここから将来有望な選手が出てくれば、本当にすばらしいと思います」

「デニスの存在があって、(同国の)トゥルシンバエワ選手がいて、彼女がデニス亡き後、背中を追うように世界選手権で(カザフスタン)初の女子メダリストとなって、シニア女子初の4回転ジャンプを成功させました。そこからシニア女子も4回転ジャンプを入れるようになりました。デニスの影響は大きいと思います」

 無良さんは、改めてテンさんのことを思う。

「新型コロナウイルスで自粛モードの最近は、過去のフィギュアスケートの映像を見られるチャンスもあって、デニスの滑りを見て懐かしく思っていました。デニスは本当に優しい人で、現役時代は四大陸選手権や世界選手権などの試合で一緒になることも多く、デニスは調子が悪い時も良い時もいつも、戦友である自分に『次、また頑張ればいいね』と思いやりのある言葉をかけてくれました。温かくて、気遣いができる本当に誰に対しても紳士でした」

 無良さんと同じく昨年のアイスショーに出演したセルゲイ・ボロノフ選手(ロシア)は、こう話す。

「2年経っても、私はデニス・テンの死が信じられないのです。私にとって彼は賢く多才で、一生忘れることができない人。アカデミー設立のニュースは最近知りました。これは必要なことだと信じています。ただ、すぐにデニスのようなレベルのスケーターが現れるとは思いませんが」

 6月13日はテンさんの誕生日。彼の遺志が形となるアカデミーが成功することを願う。(本誌・大崎百紀)

※週刊朝日オンライン限定記事