「現状0.6%の空室率は、今後の1年間で4.3%程度にまで急上昇すると予測しています。コロナ禍前の企業のトレンドは社員を本社1カ所に集め、コミュニケーションを良くして発想を磨き、発展を目指そうというものでした。ところが、テレワークが浸透し、距離の概念がなくり、オフィスは外に分散するような形になると見ています」

 コロナ対策により、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を導入する試みが多方面で行われている。

「オフィスでの机と机の距離が広がり、従業員1人当たりの床面積は大きくなります。ソーシャルディスタンスで必要になるオフィススペースと、テレワークで要らなくなるスペースがプラスマイナスで相殺されると見ています」(今関氏)

 ただ、今、オフィスビル業界にとって深刻なのは外出自粛の影響だ。

「オフィスビルのテナントからの解約の連絡は増えてますね。特に来店型のオフィスが苦戦しています。旅行代理店とか、イベントを中心とする人材派遣業なども影響が大きい。オフィスビルの1階や地下には飲食店などの店舗が入っているわけで、賃料負担が厳しいという声も聞かれます」(同氏)

 ただし、オフィスの賃貸契約上、半年前に解約の通知をするのが一般的。解約の影響が空室率に表れてくるのは半年先になる見通しだ。

「先行きがわからない中、今の段階でやめられるものはやめようという動きが全業種にわたって出ています。たとえば、交渉中の物件を中止にする、白紙に戻すという例が顕著ですね」(同氏)

 前出の日本総研調査員の室元氏によれば、空室率の上昇で、オフィスの賃料も2割下落し、リーマン・ショック後の水準まで下がる可能性もあるという。

「空室率の上昇は、借り手側からすると、需給の関係で、非常にいい立地の所を、賃料を抑えて借りることができると思いますので、そういった意味では借り手市場になるだろうと思います」(本誌・上田耕司)

※週刊朝日オンライン限定記事

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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