在宅勤務となり、閑散としたオフィス(写真はイメージ)(C)朝日新聞社
在宅勤務となり、閑散としたオフィス(写真はイメージ)(C)朝日新聞社

 新型コロナウイルスが収束したら、ほとんど空きがなかった都心のオフィスの空室率が急上昇しそうだという予測が相次いでいる。要因として挙げられているのがテレワーカー(在宅勤務者)の増加だ。

 日本総研は5月13日、「全就業者の1割がテレワークを続けた場合、オフィス空室率は15%近くまで上昇する見込み」という衝撃の調査結果を発表した。調査部の調査員・室元翔太氏はこう語る。

「東京都を対象とした調査では、今年4月のテレワークの実施率は5割程度でした。出社できない環境でしたので高水準となりました。それがコロナ後に定着するのかどうかがキーだと思っています」

 テレワークが定着すると、その分のオフィススペースが不要になる。

「今回のコロナ禍で一番わかったことは何かというと、テレワークが可能で出社しなくてもいい業務と、可能ではない業務とが洗い出されたことだと思っています。私は来年夏ごろまでに、オフィス空室率が15%近くまで上昇すると試算しました。これは(在宅勤務者が)全就業者の1割での試算なので、テレワークがもっと進めばさらに空室率は上昇する見込みです」(室元氏)

 全国で緊急事態宣言が解除された5月25日、森ビルは「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査2020」を発表した。それによると、都心の空室率は1・8%と2年連続で1%台。前年度と比べて、0・1ポイント低下しただけだった。都心の空室率は低く、ほぼ満室状態だということらしい。

 ただし、同調査は2019年4月から20年3月末までの1年間の結果について。これからの1年の見通しに関して、森ビル広報室の担当者はこう話す。

「新型コロナの影響ははかり知れず、あまりにも先が不透明過ぎて見通せない状態です」

 対して、「空室率が上がり始めている」と言うのは、オフィス賃貸市場の調査を手がける三幸エステートのチーフアナリスト、今関豊和氏だ。

 同社グループのオフィスビル総合研究所は5月29日、「東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区) 今後3年間の見通し」というオフィス空室率の予測リポートを発表した。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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