お金の収支をそれぞれ三つに分けて考えると、管理しやすくなるという。

 そして、年金収入だけで1カ月の生活が成り立つように定年前後で家計のダウンサイジングを行う。

 大江さん自身、退職後は平日のランチ代や会社帰りの飲み会が減ったことで、1カ月の食費は約3万7千円減った。洋服代も新たに買いそろえるスーツ代が不要になり、約3万7千円減。

 1カ月の支出は34万円から22万円までダウンサイジングに成功したという。

 昨年6月、金融庁から報告書が発表され「老後は2千万円の預貯金が必要」との数字が話題になったが、これは総務省の家計調査がもとになっている。「高齢夫婦無職世帯」の毎月の赤字額が、試算時では約5万円で、年金で暮らす期間を30年とすると、約2千万円の資産の取り崩しが必要になる、としている。老後に不足する額は生活環境によって異なり、食費などがあまりかからない世帯であればもっと支出は少なくなる。また、賃貸住宅に住んでいればもっとかかる。

 大事なのは「退職金」はできるだけ取り崩さないことが鉄則で、投資や無計画な起業はもちろん、住宅ローンなどの借金返済や海外旅行などに安易に使わないこと。「老後破綻危険度チェックリスト」で、退職金に対する考え方を見直してみよう。

「年金を受け取るのは2カ月に一度の偶数月ということは知っていましたが、毎月の給料で家計を組み立てる長年の習慣が抜けなかったので、慣れるのに時間がかかりました」

 そう語るのは、『定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!』(日経ビジネス人文庫)の共著者で社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さん。

「夫は60歳で退職したので、65歳になるまでは毎月10万円ぐらい貯金を取り崩していました。わかっていても銀行口座から毎月10万円が減っていくのはなんとも言えない圧迫感がありました」(井戸さん)

 年金が満額支給される65歳まで定年を延長することもできたが、夫がカレンダーの退職する日に印をつけて楽しそうにしている姿を見て、「無理に働くことを勧めて機嫌を損ねて家庭内がギクシャクするよりも、毎日楽しく暮らしてもらったほうがいいと思って」、60歳での退職に理解を示したという。

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