「大阪コロナ追跡システム」導入の発表を行う大阪府の吉村洋文知事=5月12日(撮影・粟野仁雄)
「大阪コロナ追跡システム」導入の発表を行う大阪府の吉村洋文知事=5月12日(撮影・粟野仁雄)

「大阪モデル」の条件をクリアしたとして政府の緊急事態宣言解除を待たずに5月16日から外出自粛・休業要請などを一部解除した大阪府の吉村洋文知事は、12日に独自の「コロナ追跡システム」を公表している。「5月中に導入したい」としているが個人情報上の懸念を払拭(ふっしょく)し切れない。

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 劇場やライブハウスなど、不特定多数が集まるイベントの主催者や店舗・集客施設などが大阪府のホームページ(HP)からQRコードを取り込み印刷して入り口に掲示する。訪れた参加者や利用客がスマホで読み込み、府のHPにメールアドレスを登録。その会場や店舗などで新型コロナウイルスの感染者の利用が判明すると、府がメールで一斉送信し注意喚起する。

 吉村知事は「登録は1分でできます。施設や集会で陽性者やクラスター(集団感染)が発生した場合、できるだけ早く情報を提供し、新たなクラスターが発生するのを防げる」とPR。そして「個人情報を守りながらITで新型コロナの追跡システムを作れないかを検討してきた」とする。同知事は「学校など来る人がわかっている場所ではなく映画館やパチンコ店、飲食店など不特定多数の人が集まる所に導入してほしい。あくまでお願いベース。『この店、QRコードはないの?』という空気を大阪で作っていきたい」と話した。

 同知事によると発案者は府のスマートシティ戦略部長・坪田知巳氏。IBMの大阪事業所長だった坪田氏は橋下徹元知事以来の「民活導入路線」で4月から抜擢(ばってき)された。「民間の人でないとこんな発想できません」と打ち明けた。

 果たしてプライバシーは守れるか。同知事は「台湾や韓国はITで陽性者の動きを把握し、それを情報公開して感染拡大防止に努めているが、個人情報の保護を優先するのが日本の法体系」と強調した。「府はメールアドレスだけを管理。名前や住所、電話番号、GPSによる行動履歴などは取得しない」とする。

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「個人情報保護優先」に疑問も