こうした相続の現場で発生する課題に対し、有効な対策が「財産の見える化」「財産管理の見える化」「気持ちの見える化」という3つの見える化だ。

 三菱UFJ信託銀行で1万件を超える相続案件を扱った、『教科書には書いてない相続のイロハ』(日経BP)の著者・小谷亨一MUFG相続研究所所長はこう勧める。

「いまの70~80代は戦後の高度成長を支えたプライドのある方々で、『自分のことは自分で決めたい』『子どもには迷惑をかけたくない』という思いが人一倍強い。しかし、個人差はあっても誰もが加齢により徐々に体力が落ちたり記憶が曖昧になったりして、自立して日常生活を送ることが難しくなっていく。認知機能が低下した後も自分の希望する財産管理、相続をしてほしいと考えるなら、元気なうちに道筋をつけておかないといけない」

 具体的には、財産を整理して家族が把握・管理しやすい状態にしておく(財産の見える化)、そして認知機能が低下した後も自分の望む形で財産管理が行われるよう金融商品や公的制度を効率的に活用する(財産管理の見える化)ことが挙げられる。

■ 財産の見える化 チェックリスト→チェックされた項目には期限を設定して対応
【年金・預金・保険】
□ どんな金融機関と取引をしているか家族は知らない。
□ 通帳や保険証券、印鑑の保管場所を家族は知らない。
□ 年金の振込口座や年金番号を家族は知らない。
□ 公共料金やカードの引き落とし口座がバラバラ。
□ ほとんど利用していない口座がある(ゼロ円口座を含む)。
□ 転勤先や海外赴任先で開設した口座をそのままにしてある。

【カード・借入金】
□ ほとんど利用していないクレジットカードがある。
□ ほとんど利用していないキャッシュカードがある。
□ ほとんど利用していないポイントカードがある。
□ 借入金や借入証書の保管場所を家族は知らない。

【デジタル資産】
□ オンライン取引や暗号資産(仮想通貨)の利用を家族は知らない。
□ ICカードや航空会社のマイルの利用を家族は知らない。

次のページ