だが、16日朝11時に予定されていた衆議院予算委員会の理事懇談会が突然、延期になった。この日の朝、公明党は幹部で会合を開く一方、安倍首相と山口氏は再度、電話で会談していた。

「山口氏は、『今回の補正予算でなければダメだ。次では時間がかかりすぎて意味がない』と、安倍首相に強く迫ったそうです。それでも難色を示す安倍首相に対して『それなら重大な決意がある』『これからを考えなければ』と大臣、副大臣などの閣僚を引き上げての閣外協力や、ひょっとすれば連立離脱もある、と示唆したのです。これには、さすがに安倍首相もびっくり。『前向きに考えます』と言うしかなかった」

 このやり取りを受けて補正予算成立の見通しが立たなくなったため、理事懇談会は中止となっていたのだ。

 この後、安倍首相は麻生太郎財務相や二階幹事長、岸田文雄政調会長と会談。最後は、閣議決定されていた予算を組み替える決断をしたのだった。前出の公明党国会議員はこう語る。

「一律10万円給付が決まった時は沸きましたね。3月から我が党が主張していたことを、予算に盛り込ませたのですから。山口氏は本当に、普段は声を荒げたりしない冷静な人柄です。それが『こちらも覚悟がある』と安倍首相に迫ったそうです。我々もひょっとすれば、連立離脱をもあるのではないかと感じていた。そうなれば選挙で困るのは自民党ですよ。山口氏はそこも踏まえた上で安倍首相に直談判したと思う。二階氏の発言と公明党の動きは別だとされているが、山口氏が『首相に決断を促した』とまでマスコミを前に言うのです。二階氏サイドからは、今ならひっくり返せると感触を得ていたと思いますね」

 安倍首相の「完敗」とも見ることができる今回の一件。ただ、ある自民党の幹部はこんな見方を示す。

「安倍首相も軽く考えていたところがあるが、30万円給付案があまりに不評で、非難ごうごうだったのは誤算だったでしょう。そんなタイミングでの二階氏と公明党の連合による一律10万円給付の申し出は結果的に“渡りに船”。事実、支持率も思ったほど低下しなかったので、ホっとしているようです。気になるのは、今回の補正予算組み換え騒動で、安倍首相は、ほとんど菅義偉官房長官と話していないこと。ますます、2人の亀裂が深くなっているのかな……」

(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事