二階幹事長(C)朝日新聞社
二階幹事長(C)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、安倍政権が打ち出した経済対策で最も注目を集めているのが、国民1人当たり10万円の現金給付だ。

 安倍首相は4月16日、当初は自民党の岸田文雄政調会長の主導による「減収世帯への30万円給付」を前提として組まれていた補正予算の組み替えを指示。これにより、補正予算は総額約25兆7000億円になり、当初は108兆円と想定されていた緊急経済対策の規模は、117兆円に膨れ上がった。

 閣議決定されていた補正予算が、国会に提出される直前に組み換えられるという異例の事態はなぜ起きたのか。カギとなったのが、自民党の二階俊博幹事長と公明党の動きだ。自民党二階派の幹部が誇らしげにこう語る。

「二階幹事長と公明党には、強固なパイプがある。土壇場で両者のラインが動いて、一度は決まっていた『減収世帯への30万円』案をひっくり返した。両者が組むと、安倍首相も飲まざるを得ないほどのパワーがあったということだ」

 二階幹事長が「一律10万円の現金給付を求めるなどの切実な声がある」と発言し、政府に「一律10万円給付」を要請する意向を表明したのは14日。すると、これに公明党も素早く呼応した。公明党の支持母体である創価学会には、中小企業や自営業者が多いとされ、3月頃から「一律10万円給付」案を主張していたのだ。公明党所属の国会議員がこう語る。

「二階氏から先に話を聞いていたのかと思うほど、反応は早かった。15日にすぐに急に招集がかかり、10万円給付を求めるぞと幹部が言いはじめました。補正予算が国会に提出直前だったので二次補正予算でやるのだと思っていたら、『提出前に10万円給付でなければいけない。組み換えだ』と言うので、驚いた」

 公明党の山口那津男代表は4月15日に急きょ、安倍首相と会談。二階氏同様に一律10万円給付を求めた。会見後には、

「現金給付の話しかしておりません」

 と、普段は温厚な山口氏が珍しく強い口調で話した。だが、この時点では政府内には、そこまでの危機感はなかったという。

「相手が山口氏ですから、『検討しますね』という答えでしたが、二階氏や山口氏の主張する10万円給付は、今回の補正予算で30万円給付を決めた後、二次補正で出せばいいと、安倍首相も深刻には思っていなかったようだ」(自民党幹部)

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安倍首相サイドは『ホッとしている』との見方も