コロナ対策で日本よりも一足先に動き出した米国は、すでに「雇用崩壊」に直面している。

 ニューヨーク(NY)で必要不可欠な職種以外に在宅勤務を義務づける「外出制限令」が敷かれたのは3月22日。ブロードウェーの劇場も閉鎖となり、観光客らでにぎわっていたレストランなどが次々に一時閉店に追い込まれた。

 ナタポン・ユスリさん(37)はタイ料理店でウェーターをしていたが、一時閉店で解雇されたという。店の再開も見通せない。「(NYは)眠らない街と言われているけれども、いまは全く眠ってしまったようだよ」

 失業した人びとが巷にあふれ、「ファイナンシャル(金融の)パンデミック」という言葉も聞かれるようになった。米国では3月中旬から3週間で、1600万人超という空前の失業保険の申請者数を記録した。

 NY在住の小倉梨絵さん(35)も失業保険を申請した一人だ。フリーのヘアメイクアップアーティストとして活動する彼女は、モデルや俳優の写真撮影、結婚式などを支えてきた。しかし外出制限令以来、自宅待機を余儀なくされている。近距離で接する仕事でもあり、6月まで予定していた仕事10件はキャンセル。収入はゼロとなり、貯金を取り崩しての生活だ。

 地元メディアによると、NY州労働局は失業保険申請の急増でパンク状態だという。失業保険の問い合わせは通常だと1週間で5万件ほどだが、3月23~28日の1週間だけで820万件。同局のウェブサイトにもアクセスが殺到し、何度もサーバーがクラッシュする事態になっている。

 NYには小倉さんやナタポンさんのように、フリーランスやバイトで生計を立てている人が150万人近いとされ、外出制限令で最も影響を受けている。会社勤めの「ホワイトカラー」と呼ばれる人々も楽観できない状況だ。

 雇用への危機感は世界全体で高まっている。国際労働機関(ILO)は4月7日、4~6月でフルタイムの労働者1億9500万人分にあたる規模の雇用が失われる恐れがあると推計した。その規模は、第2次大戦後に最悪だった2008~09年のリーマン・ショック時を上回るという。

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