■社員が講師務め地道に啓発活動

 CMでは16年から「ガチダンス」「鬼ガチダンス」「青ダンス」といった難易度の高いダンスに挑戦する10代の学生を主人公に、「一方的に商品をアピールするのではなく、また完成されたタレントを起用するのでもなく、一般参加者とともにブランドを作っていこうというコンセプト」(前出の原さん)の参加型キャンペーンを展開。

 YouTubeの公式チャンネルのコメント欄には

「ただ素直に羨(うらや)ましい。オジサンにはこんなキラキラ楽しい学生時代は無かった」「この汚れのない青春120%。10代で経験できて羨ましい」といった、年配者からの賛同意見が並ぶ。比較的弱点とされた10代を含め、世代を超えたPRに成功した好例といえよう。

 それらが高く評価され、昨年の第11回日本マーケティング大賞で、「中高校生に寄り添うブランドを目指す『ポカリスエット』のマーケティング」が見事グランプリを獲得した。

 今年からは、さらに訪日外国人の熱中症対策として、海外でも人気があるボーカロイドの初音ミクを、ポカリスエット・アンバサダーに起用した。バーチャルタレントのミライアカリ、富士葵、YuNi、MEIKO、星乃一歌とともにYouTubeで水分補給の大切さやポカリの魅力を伝えている。

 その半面、地道な営業努力を積み重ねてもいる。

「80年代、熱中症という概念がなかった頃から水分と電解質補給の重要性を伝えてきたのが大塚製薬。スポーツ、職場、学校の部活動、高齢者の水分補給などあらゆる発汗シーンにおいて社員が講師となり、熱中症予防の啓発活動を続けてきました」(前出の菊池さん)


 昨年9月、徳島を訪れた際、糖質濃度を決めたエピソードを思い出して眉山に登ってみた。足元を木の根が這(は)い、頭上に木々が交差する山道を1時間余り。汗をぬぐいながら市街地を一望にする展望台で飲んだポカリスエットは格別においしく感じた。

 はるか東に目をやると、和歌山県との間の紀伊水道上空を関西空港へと着陸態勢に入った飛行機がスーッと横切っていく。

 41年前、まだ関空はなかった。その翌年に生まれたポカリスエット。時空を超え、今もなお歴史の一ページを刻んでいる。

週刊朝日  2020年4月24日号