「変える必要がない最終商品」と語る大塚製薬の原康太郎さん (撮影/横関一浩)
「変える必要がない最終商品」と語る大塚製薬の原康太郎さん (撮影/横関一浩)
今年のポカリスエットのCMには15歳の高校生、女優の汐谷友希を起用した(大塚製薬提供)
今年のポカリスエットのCMには15歳の高校生、女優の汐谷友希を起用した(大塚製薬提供)
発売開始当時の「ポカリスエット」 (c)朝日新聞社
発売開始当時の「ポカリスエット」 (c)朝日新聞社

 時代を超えて親しまれる商品にスポットを当てる短期集中連載「ロングセラーの理由(わけ)」。第1回は4月にデビュー40周年の大きな節目を迎えた超ロングセラー「ポカリスエット」だ。誰もが口にしたことがある国民的ドリンクは、なぜ売れ続けているのだろうか? ライター・高鍬真之氏がその秘密に迫る。

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《汗で失った水分・イオン(電解質)を速やかに補給できる機能性飲料》

 ポカリスエットを一言で紹介するなら、こう要約できるだろう。パッケージデザインは、「水と電解質の補給と吸収スピード」という商品特性をイメージして、目に鮮やかなブルーと波動を表現した白い波形を組み合わせた。

 これらは、1980(昭和55)年4月の発売以来、ほとんど変わりはない。店頭では、遠目からも認識できるほど目立つ。

「ポカリスエットは、ずっと組成、味、パッケージなどのコンセプトを変えていません。改廃の激しい清涼飲料の中では、非常に珍しいブランドです」

 と話すのは、食品専門紙、食品産業新聞社新聞本部で清涼飲料を担当する菊池美智世本部長だ。

「製薬会社だからこそのエビデンス(根拠)に裏打ちされた開発を行い、誕生時から適切な濃度と体液に近いイオンバランスを実現しています。時代に先駆け、エビデンスを重視していたからこそ信頼され、長く愛され続けるブランドに育ったといえますね」

 また、大手業界紙、日本食糧新聞社編集営業本部の本吉卓也さんもこう分析する。

「機能性飲料のパイオニア、イノベーターとして、市場開拓・普及に時間がかかることを経営者は理解していた。長い目で見て、じっくりとブランドを育ててきたのです」

 この機能性飲料・スポーツドリンク市場はポカリスエットが牽引(けんいん)し、今もなお拡大中だ。それがロングセラーとなっている理由でもある。

 得てして飲料や食品は、味や素材を変えてバリエーションを増やす傾向にある。さらに、毎年のようにリニューアルを繰り返し、ブラッシュアップを重ねるメーカーが大半だ。

 それは細分化が進む消費者のニーズに対応するためであり、目先や風味に変化を持たせつつヒット商品を探る戦略でもある。

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