新型コロナウイルスの影響で、中野サンプラザは白いマスクと半透明のケースに入れられたアルコール消毒液がものものしい雰囲気だったが、70~80年代にロックライブが開催されたサンプラザに詰めかけた客の多くは音楽専門誌「ロッキング・オン」や「ミュージック・ライフ」を熱心に読んでいたであろうビジネスマンで、スーツ姿の彼らは開演を今や遅しと待ちわびていた。

 開演するや、ステージの円形モニターからレーザービームがすっと伸び、ほぼ完全再現という煌びやかな照明に神々しさを感じた。

「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」「タイム」「マネー」と息もつかせぬスペクタクルに歓声が上がり、風の効果音とともに披露された名曲「吹けよ風、呼べよ嵐」には会場が総立ちとなった。

 トータル2時間半に及ぶトリビュートライブの終演後、SNSでのプログレファン同士のやりとりは深夜まで続き、ロックは世代を一つにする力強い音楽だと改めて思った。

週刊朝日  2020年3月20日号

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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