河井克行前法務相(C)朝日新聞社
河井克行前法務相(C)朝日新聞社
河井案里参院議員(C)朝日新聞社
河井案里参院議員(C)朝日新聞社

「河井克行、案里夫妻の秘書が3人も逮捕されて、これほど大きくなるとは思わなかった。国会で火だるまになりながらも、東京高検の黒川弘務検事長は定年延長したわけでしょう。その効果は全くなかったことになる」

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 こうため息をつくのは、自民党幹部だ。

 公職選挙法違反容疑で3日、自民党の前法相の河井克行衆院議員と妻の河井案里参院議員の秘書3人が広島地検に逮捕されたが、急転直下の動きだった。

 広島地検は1月に河井夫妻の広島市の事務所などに家宅捜索が入っていたが、その後は音沙汰なし。2月には東京高検、黒川弘務検事長の定年延長が突如、閣議決定された。

「2月になって河井夫妻の周辺も静かになった。すっかり黒川検事長が収めてくれたんだと思っていたんだが…」

 自民党所属の国会議員はこう困惑する。実際、河井前法相も周囲にこう釈明していたという。

「総理が(黒川検事長の定年延長などで)いろいろとやってくれている。違法なこともやっていないから大丈夫です」

 また、逮捕された河井前法相の政策秘書、高谷真介容疑者も秘書仲間にこう語っていたという。

「代議士(克行氏)が定年延長で大丈夫だと言っている。何とかお咎めなしで、終わるような気がする。案里さんの参院選は、安倍官邸が総力を上げて当選させたんだから…」

 だが、その見込みは見事に外れてしまった。これまで、甘利明衆院議員のUR疑惑や安倍首相の森友学園・加計学園の問題などを「官邸の門番」として、穏便にコトをおさめてきたとされる黒川検事長。

「門番としてバリバリやってきた時、黒川氏は事務次官や官房長というすべての検察の事案にタッチできるポジションだった。東京高検検事長は検察としては検事総長に次ぐ、ナンバー2。しかし、広島地検の事件に口をはさめる立場じゃない。国会議員が期待する方がおかしい」
(検事長経験者の弁護士)

 そうした中、本誌が既報したように2月19日の検察長官会同で静岡地検の神村昌通検事正が、黒川検事長の定年延長を批判する「検事正の乱」を起こした。ある検事がこう話す。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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検察内で黒川検事長は定年しろという声も