花が咲き始めた東京・上野恩賜公園。春本番になれば笑顔も満開になるだろうか
花が咲き始めた東京・上野恩賜公園。春本番になれば笑顔も満開になるだろうか

 厚生労働省によると、新型コロナウイルスの感染経路の特徴としてスポーツジム、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなどで一人の感染者が複数に感染させた事例が報告されているという。そのうえで、

<屋内の閉鎖的な空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、患者集団(クラスター)が発生する可能性が示唆されます。そして、患者集団(クラスター)が次の集団(クラスター)を生むことが、感染の急速な拡大を招くと考えられます>

 として注意を呼びかけた。

 ここまで当たり前の暮らしを制限するウイルスは記者の記憶にない。その影響の深刻さをこの目で確かめようと、街に出た。

 JR新橋駅近くの繁華街で「煮込み」を売りにする居酒屋は、ガランとしていた。店主が嘆く。

「ぜんぜんヒマですね。売り上げは昨年対比で半分以下です。宴会を控えなさい、とサラリーマンたちは言われているようですから」

 別の和食居酒屋の店長もボヤくことしきりだ。

「宴会予約のキャンセルが多いです。30名とかの団体のキャンセルが入れば、取り戻しようがないですよ。他の予約をお断りして席を確保しているのでね。また宴会が入ってくるのを祈って待つしかありません。9年前の東日本大震災後に近い空気を感じています」

 観光客らに人気の著名寿司店スタッフは明かす。

「平日より、土日祝日の落ち込みが激しいですね。3割ぐらい売り上げが減ってます。海外から寿司を食べに来る外国人も減っています」

 電通は、東京の本社ビルに勤務する全従業員約5千人を対象に当面の間、原則として在宅でのテレワークに切り替えると発表した。

 同社の本社ビルは新橋にほど近いだけに波紋を呼んでいる。カレーライスがメインの飲食店店長は、ため息交じりにその影響を語る。

「ランチの状況がひどくなり、売り上げは5分の1ほどと壊滅的です。新型コロナウイルスは密室空間で感染しやすいからダメ、というのも飲食店には痛い」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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飲食店長「私たちはどうしたらいいのでしょうか」