横浜港に停泊中の大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号では集団感染が深刻化している。2月19日までに検査を受けた延べ3011人のうち621人の感染が確認された。5人に1人という高い割合だ。

 検査で感染が確認されず、症状のない乗客については、同日から下船が始まった。同日は高齢者を中心に約500人が降りたという。対象者全員が下船するのは21日の見通しだ。

 集団感染が起きたことについて、専門家で医師の岩田健太郎・神戸大教授が2月18日夜に、自身が語る動画をユーチューブにアップ。船内に同日入ってわかったという問題点を告発した。

 この動画の再生回数は、2月19日夜までに約100万回を超えている。岩田教授は英語でも情報発信しており、英BBCなど海外メディアでも取り上げられた。

 岩田教授は、船内はウイルスがいない安全なゾーンと、いるかもしれない危ないゾーンの区分けが不十分だと指摘。厚生労働省などの対応に問題があったと訴えた。

「まさかここまでひどいとは思ってなくて、ちゃんと専門家が入ってリーダーシップを取って、感染対策についてのルールを決めて、やっているんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです。もうとんでもないことなわけです」

 そして、こうした実情が行政によって隠されていることにも言及。ネット上での告発に踏み切った理由をこう述べた。

「まずい対応がばれるのは恥ずかしいことかもしれないですけど、これを隠蔽(いんぺい)すると、もっと恥ずかしいわけです。やはり情報公開は大事なんですね。誰も情報公開しない以上は、ここでやるしかないわけです」

 岩田教授は船内に入ったものの、厚労省側の判断で1日で追い出されたとしている。これに関して、橋本岳厚生労働副大臣はツイッターに2月19日午前、次のように書き込んだ。

「なお昨日、私の預かり知らぬところで、ある医師が検疫中の船内に立ち入られるという事案がありました。事後に拝見したご本人の動画によると、ご本人の希望によりあちこち頼ったあげくに厚生労働省の者が適当な理由をつけて許したとの由ですが、現場責任者としての私は承知しておりませんでした。お見掛けした際に私からご挨拶をし、ご用向きを伺ったものの明確なご返事がなく、よって丁寧に船舶からご退去をいただきました。多少表情は冷たかったかもしれません。専門家ともあろう方が、そのようなルートで検疫中の船舶に侵入されるというのは、正直驚きを禁じ得ません。ただの感染症蔓延地域ではないのです。本件は厚生労働省本省に伝え、なぜこのような事案が発生したか確認を求めています」

次のページ
クルーズ船での感染症対策の失敗を認めない政府