「考え方や名称は宗派によって異なりますが、仏壇やお墓を購入したときは、お坊さんがお経をあげて『魂入(たましいい)れ』をします。そこで普通のモノが、手を合わせる対象になるわけです。逆に処分するときは、仏壇や遺影、位牌(いはい)から『魂抜(たましいぬ)き』の儀式を行う。よく、閉眼供養と呼ばれているものです」

 お守りやお札、人形や神棚など魂が宿っていそうで粗末にできないものを、寺院や神社で供養して焼却するおたき上げのイメージだ。

 奈良さんの檀家の木島由美子さん(72)は、娘や孫と暮らしている。数年前に亡くなった夫とその両親、祖父母の位牌をまつった大きな仏壇を埼玉県の自宅に置いていた。

「私が死んだときに大きな仏壇を娘に引き継がせるのはためらいがあり、夫の親族に託して、私は夫の位牌を置くための小さな仏壇を購入しました。夫の魂を入れる開眼の法事を行ったとき、『夫が帰る場所ができた』とほっとしました。居間に置いて大好きなテレビを毎日一緒に楽しんでますよ」

 菩提(ぼだい)寺がない場合は、仏具店や葬儀会社で引き受けている場合もある。

 神奈川県の新川崎雲山堂は、創業70年を誇る仏壇・仏具専門店。3代にわたり仏師を務めた家柄で、山梨にある大野山本遠寺のお万の方や徳川家康などの位牌や厨子(ずし)修復を手掛けてきた老舗でもある。

 3代目社長の青地直樹さんは3、4年前から、仏壇や位牌処分の問い合わせが増えたと話す。

「もともと仏壇の買い替えに伴うご供養と処分はしていました。しかし最近は、『両親が施設に入居して仏壇やお位牌の世話をする人がいなくなった』『仏壇が大きすぎる』などの理由で、購入はできないが、供養と処分だけをしてほしい、といった相談がきます」

 火気厳禁の高齢者施設も多い。仏壇を守る本人が元気でも、お線香をたいたり、ろうそくを灯(とも)したりすることができないため、仏壇を処分せざるを得ないケースもある。

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