葬儀での中村哲さんの祭壇=12月11日、福岡市 (c)朝日新聞社
葬儀での中村哲さんの祭壇=12月11日、福岡市 (c)朝日新聞社
空港で中村哲さんのひつぎを担ぐガニ大統領(中央)=カブール、12月7日 (c)朝日新聞社
空港で中村哲さんのひつぎを担ぐガニ大統領(中央)=カブール、12月7日 (c)朝日新聞社
中村さんとともに殺害された警備員や運転手ら5人とされる写真=現地の放送局「1TVNewsAF」のマディ・アクラキさんのツイッターより
中村さんとともに殺害された警備員や運転手ら5人とされる写真=現地の放送局「1TVNewsAF」のマディ・アクラキさんのツイッターより
警備員チーフのマンドザイさんの墓の前に座る息子たちの写真=現地の放送局「1TVNewsAF」のマディ・アクラキさんのツイッターより
警備員チーフのマンドザイさんの墓の前に座る息子たちの写真=現地の放送局「1TVNewsAF」のマディ・アクラキさんのツイッターより

 アフガニスタンで銃弾に倒れた中村哲医師(73)の葬儀が、福岡市で12月11日にあった。中村さんはNGO「ペシャワール会」の現地代表などを務め、30年以上にわたって医療や農業用水路の建設などに取り組んできた。葬儀には知人やNGO関係者ら1千人以上が参列し、中村さんの思いを引き継ぐことを誓った。

【写真】空港で中村哲さんのひつぎを担ぐガニ大統領

 一般市民も参加できるお別れの会は、2020年1月25日に福岡市内で開かれる見通し。

 遺骨の一部は本人の希望に沿って、用水路で緑の大地に変わったかつての砂漠に分骨される予定だ。記念施設をつくることも検討されている。最後まで現場に立つことにこだわった中村さんは、アフガニスタンに戻ることになる。

 葬儀ではひつぎにアフガニスタンの国旗がかけられた。中村さんとともに殺害された現地の警備員や運転手ら5人の遺影も置かれた。長男の中村健さんは5人を悼んで、次のように述べたという。

「最初に申し上げたいのは、父を守るために亡くなられたアフガニスタンの運転手や警備の方、そして残されたご家族・ご親族の方々への追悼の思いです。申し訳ない気持ちでいっぱいです。悔やんでも悔やみきれません。父も、もしこの場にいたら、きっとそのように思っているはずです。家族を代表し心よりお悔やみを申し上げます」

 ペシャワール会によると、参列者からの香典は支援事業にあてる。4人の遺族にも見舞金などを支払う方針だという。

 中村さんはアフガニスタン東部ジャララバードで12月4日、車で移動中に襲われた。遺体は9日に福岡に到着し、司法解剖の後に福岡県大牟田市の自宅に戻った。ペシャワール会の村上優会長は、中村さんの思いを引き継ぐことを宣言し、次のように語った。

「中村先生はもともと敵とか味方とかという関係を止揚というか、乗り越え、悪い人も良い人もいて人生だと、共生を求められていた。今回の事件は、本人の生きてきたそのものを体現した、『崇高』とも表現すべき犠牲だと私は受け止めています。私たちは中村先生が実践してきた全ての事業を継続し、彼が望んだ希望は全て引き継いでいきたい」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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