「近畿圏では関西大は身近な存在。名前を知っているというだけではなく、家族や親戚に関大生がいるというほどで、スポーツ選手や芸能人にも関西大出身者は多い。受験生になる前から関西大の名を耳にする機会があるのは大きい」

 他大にはない強みもある。関西大は主な文系・理系学部はキャンパスが同じで、立地がよく通いやすい。同志社大、立命館大、関西学院大ともに、主要な文系学部があるキャンパスとは離れた郊外に理系学部が立地する。

「自宅から通いながら、研究をしたい受験生にとっては本学を選ぶ要因になっている」(入試センター広報担当者)

 関西私立最難関の同志社大は専願率で11.4%にとどまった。しかし、同志社大専願者の国公立併願比率を見ると、82.7%と他の3大学を大きく引き離している。京都大や大阪大など難関国立大の併願先として選ばれている実態がある。

 関西学院大の専願率は7.1%と最も低い結果となった。人気大学ではあるが、近年の受験生は立地を重視する傾向があり、文系・理系ともに最寄り駅から遠いことがネック。「それでもどうしても関学に行きたい」という志願者の獲得には、さらなる魅力や特色が必要なようだ。

 産近甲龍では、専願率に大きく差がついていた。近畿大は専願者が49%とほぼ半数を占める。

 近畿大の強みは、学部の多さだ。14学部48学科あるのに対し、京都産業大は10学部18学科、甲南大は8学部14学科、龍谷大は9学部27学科となっている。

 特に近畿大は理系が充実している。京都産業大、甲南大、龍谷大では理系よりも文系学部のほうが明らかに定員が多いが、近畿大は文系と理系の定員は半々。医学部や薬学部、建築学部など産甲龍にはない学部が多い強みがある。

 また、近畿大は併願制度が充実しているのが特徴の一つだ。1度試験を受けることで、多数の学部・学科を併願することができる。本誌の調べでは1人につき5個以上の併願をしており、高い数字になっている。

 近畿大の入学センター担当者はこう見る。

「近年は志願者が増え、偏差値も高まってきており、産近甲龍から抜け出ている。理系の国公立受験生は関関同立に次いで近大までを受験するという動向があり、近大は関関同立の一角に入っていると見ている。それが専願率の数字に表れているのではないでしょうか」

 今後18歳人口が減っていくことが見込まれ、各大学では学生獲得に向けた試行錯誤がなされているところだ。専願率からはその成果が見えてきている。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2019年12月20日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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