23年間サトシ役を続ける松本さんは先行上映会で、第1話の進化のエピソードについて、舞台の隣にいたピカチュウの着ぐるみに次のように話しかけた。

「23年間知りませんでした。ピカチュウはピカチュウのままだと思っていました。知らないよね、言わないし」

 もちろんピカチュウは返事できないが、会場は笑いに包まれた。

 ポケモンはゲームが出る度に新しいキャラクターが登場する。フシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメといった初期のものから、最新作のヒバニーやワンパチまで様々だ。動物や虫、魚など実際の生きものを参考にしたものが多く、総数は800種類以上まで増えている。しかも、ポケモンはそれぞれに属性があり進化する。ニューキャラを投入することや進化によって、ファンを飽きさせないのだ。

 そんなキャラが活躍するTVアニメシリーズは、アニメ界の中でも別格の存在。参加する声優も、松本さんや林原めぐみさんらベテランを含め豪華だ。今回、ゴウ(キャストは山下大輝さん)と幼なじみという設定のコハル役として初めて出演するのが花澤香菜さん。多くのアニメで主人公を演じた押しも押されもせぬ人気声優だ。花澤さんは先行上映会で、コハルのオーディションに合格したときの喜びをこう語った。

「決まったという知らせを知ったとき、日比谷の交差点で信号待ちをしていたんですけど、『やったー』って言っちゃいました。ずっとポケモンが好きで小さいころから見ていました。サトシと共に育ってきたので、本当に生きててよかったと思いました」

 花澤さんが最初にポケモンを見始めたのは、設定上10歳の主人公サトシより年下だった8歳ころ。憧れだったサトシと共演できる喜びは特別だったようだ。

「コハルとしてサトシに会えたときから、『サトシだあっ!』って思っていました」

 先行上映会でこのようにハイテンションで松本さんに語りかけ、あまりの勢いに、「私、気持ち悪くないですか……」と自らフォローしていた。

 アニメの公式サポーターで女優の飯豊まりえさんは、第1話のゲスト声優として、ポケモンの「ガルーラ」の子ども役として出演。

「ポケモンの声をやるのがこんなに楽しいなんて。初めて好きになったアニメがポケモンで、松本さんとお会いできて夢のようでした」

 松本さんも原点回帰の新作に、改めて意気込みを語った。

「私もワクワク、ドキドキ、ハラハラしながら、みんなと同じ気持ちでサトシと向き合っています。サトシを通じてみんなに笑顔になってもらえるよう頑張ろうという責任感が、またできました」

 TVアニメはテレビ東京系で毎週日曜日午後6時(一部地域では異なる)から放送される。第2話では、これから冒険に向かうサトシとゴウの物語が展開する。空中や水中のシーンもあって迫力満点。ゲームと合わせ、ポケモン人気はさらに加速しそうだ。
(本誌・多田敏男)
※週刊朝日オンライン限定記事