しかし、今後の展開次第でどうなるかわからない。10月23日現在、民主党の弾劾調査を支持している共和党上院議員は4人だけだが、さらなる権力乱用の証拠が示されればその数は増える可能性は十分にある。それと、22人の共和党上院議員が来年再選を控えているのは民主党にとって好材料だ。彼らは世論の動向を踏まえて、弾劾裁判で票を投じなければならなくなるからである。

 1974年に弾劾調査で追いつめられて辞任したニクソン大統領の時は、下院が調査を始めた段階で世論と共和党議員の支持は少なかったが、大統領の関係者が議会で証言し、新たな証拠が示されて支持者がどんどん増えた。その結果、共和党の指導部が大統領執務室を訪れ、「我々はこれ以上あなたを守れません」と告げ、翌日、ニクソン大統領は辞任を発表したのである。

 今回も世論調査ではすでに似たような兆候が見られる。弾劾調査開始から3週間余り経た10月16日時点で、多くの世論調査で弾劾調査か弾劾を支持する人が過半数を超えている。ワシントン・ポストは58%、ギャラップは52%、FOXニュースは51%である。特に驚きなのは、「トランプ大統領の応援団」として知られる保守系のFOXニュースで、弾劾と解任を支持する人が過半数を超えたことだ。

 一方、トランプ大統領は支持者集会でこう呼びかけている。

「政権を転覆させようという民主党の図々しい企みは有権者の反発を招き、選挙で史上最大のしっぺ返しを食らうだろう」と。

 大統領は表向き強気だが、内心はかなり追いつめられているようだ。はたしてこの弾劾調査は民主党か、トランプ大統領のどちらに有利に働くのか、今後の行方が注目される。

週刊朝日  2019年11月8日号