プロデューサー北村明子「ものすごくヘタクソな役者でも」演劇と映像の違い

2019/10/29 11:30

北村:お弁当に気をつかうのがプロデューサーなんです。ほかの予算は削っても、お弁当には予算をかけます。忖度じゃなくて気づかい。「この女優さん、風邪っぽいな」と思ったら、風邪薬を持ってって「どう?」とか、それがプロデューサーなんですよ。

林:北村さんは私たちが知らないようなお芝居をいっぱい上演されますけど、あれは子どものときに見たお芝居が“脳内資料室”に入ってるんですか。

北村:それと、戯曲をいろいろ読んで。読まないとわからないでしょ、おもしろいかどうか。私は戯曲を読むのが好きなんです。セリフしかないからおもしろくないと思うでしょ? 私も最初はそう思ったんですけど、セリフのあいだにト書きがあったら邪魔だと思うんです。ト書きをなしにして、このセリフに対して次のセリフがどう出てくるかを考えたほうがおもしろい。「少し悲しい口調で」とかってト書きがあったら、邪魔だなと思うんです。だからト書きがない戯曲が一番です。自由だから。

林:やっぱりプロは違いますね。話が変わりますが、ご本の中に井上ひさしさんのことが書いてありますけど、「井上さんのお芝居をすると命が縮まる」って皆さんおっしゃってましたよね。

北村:ああ、初日に幕が開かなかったりね(笑)。でも私は、ひさしさんの原作の舞台「ロマンス」(2007年)をやったとき、予定どおりに幕を開けましたよ。そのとき、ひさしさんが「今まで初日を延ばしてきたのは間違いだったかもしれない」と娘さんに言ったそうなんです。そして「あのとき北村さんが『絶対に初日、幕を開けます!』とおっしゃったのは正しかった。あれ以来、井上は初日を延ばしてません」って。

林:お弁当のようなこまやかな気づかいをすると同時に、そういう強いものに立ち向かって戦うこともあるわけですね。

北村:私ね、トラブルが大好きなの(笑)。「あ~、また来た来た!」と思って。トラブルが起こらない人生ってないでしょ。舞台づくりでもマネジメントでも、トラブルがなかったことってないですもん。

(構成/本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2019年11月1日号より抜粋

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