追悼アイスショーのオープニングでは、テンさんが作曲し、自ら歌った「シー・ウォント・ビー・マイン(She won’t be mine)」が流れた。

 トップバッターは無良さんだった。

「デニス、今日ここカザフスタンで一緒に滑れること、すごくうれしく思います。しっかり見守ってください。デニス、あなたはいつも僕の心の中にいます」

 そんなメッセージを流して滑ったプログラムは、テンさんが12~13年シーズンのSPで使用した「アーティスト」だった。テンさんの代表作だ。

 無良さんは出発前に、

「あの日から今でもまだ信じたくない信じられない気持ちで現実に向き合うことが難しかったけれど、やっとカザフスタンに会いに行きます」

 と自身のインスタグラムに書いていた。

 続く浅田さんは、

「デニス、今までたくさんのパワーや元気をありがとうございました。今日はデニスを思って一緒に滑りたいと思います。デニス、ずっと私の心の中にいます」

 とのメッセージを流した後に、テンさんがエキシビションで一番好きだったというプログラム「シンギング・イン・ザ・レイン(雨に唄えば)」を滑った。

 テンさんと同じ衣装を作って、テンさんと同じように滑った。この演目を選んだのは、テンさんの母親からの要望だったという。

 会場には、平昌五輪男子銀メダリスト、宇野昌磨選手(トヨタ自動車)からのメッセージ入りの垂れ幕もあった。

「僕は、素晴らしいアスリートだったデニス・テンという存在を死ぬまで忘れることはないでしょう。宇野昌磨」

 テンさん亡き後、カザフスタンのフィギュア界は、女子のエリザベート・トゥルシンバエワ選手が引っ張っている。今年3月の世界選手権(さいたま市)では、シニア女子史上初となる4回転ジャンプを成功させて銀メダルを獲得。カザフスタン女子初の世界選手権メダリストになった。試合後、「私は今日、デニスと一緒に滑りました」と語った。エキシビションでは、テンさんが歌う曲で舞った。

 「ISUデニス・テン・メモリアル・チャレンジ」でも、参加するスケーターたちの美しい舞が見られるだろう。(本誌・大崎百紀)

※週刊朝日オンライン限定記事