林:でも、いま思いどおりでしょう?

スー:いちおうパートナーと一緒に住んでいるので、完全に思いどおりにはなかなかならないですけど、これも修行と思ってます。

林:物書きの女の人って、そういうのがいいかもしれない。気軽に解消できるし、向こうの家族との付き合いもしなくていいし。

スー:突き詰めていろいろ考えたんですけど、“嫁”という規定演技ができないだろうという、謎の自信があるんですよ。たとえば相手の家に行って季節のあいさつをするとか、義理の実家のルールを学ぶとか、そういう能力が著しく低いんじゃないかと思っていて、それがいちばんコワいのかなと思いますね。

林:それが楽しいときもありますよ。

スー:「パフォーマンスとしてリラクゼーションになっている」という林さんのエッセーを読んで、すごいなと思いました。懐が深いというか、そこを楽しめる幅があるんだなと思って。

林:あちらでは仕方がないという感じだし、したことがない世界が広がるのもおもしろいじゃないですか。

スー:うーん、そこがなんか……。

林:それは年代の違いかな。

スー:たとえばママ友との付き合いを想像しても、調子に乗ってしゃしゃり出て、ママ友を引き連れて、いい気になってる自分が簡単に想像できるんですよね。

林:私なんかそういう自分がイメージできるから、できるだけ控えめに、「教えてください」とか、そういう自分を演じるのが好き。

スー:なるほど、それを演技としてやるんですね。

林:演技というか、面倒くさくなっちゃって、そんなにしゃしゃり出なくなりますよ。向こうはどう思ってるのか知らないけど、ママ友生活は楽しい日々でした。

スー:結婚したり子どもを持ったりすることをイデオロギー的に反対してるわけではないですけど、自分がやりたいことを優先してたらこうなっていたという。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

週刊朝日  2019年10月11日号より抜粋