安倍氏は首相を辞任した後、「サンデープロジェクト」に出演して、環境問題の提言を具体的に説明してくれた。ただし、安倍首相がCO2を50%減らすと提言できたのは、原子力発電を増やして、石油、石炭発電所を減らす、ということだったのである。

 たとえば、民主党政権の10年に菅直人首相は、石油、石炭火力によるCO2を思い切って減らすために、原子力発電を53%にしたい、と表明している。この時点で、稼働中の原子力発電所は54基で、電力全体の約25%であった。53%にするには、発電所を相当数増やす必要があった。

 ところが、その翌11年3月11日に、東京電力の福島第一原子力発電所で、大事故が起きた。「第二の敗戦」ともいえる出来事である。

 この大事故を受けて、菅直人首相は原発ゼロを打ち出した。

 現在稼働している原発は6基で、全ての再稼働は不可能だと見られている。もちろん原発の新設は無理だ。そして、実は、新たな石炭火力発電所の計画が進められているのである。

 そんな現状で、地球環境のためにCO2を減らすにはどうすればよいのか。具体的には、太陽光、風力などの自然エネルギーをどうやって増やせばよいのか。難しい問題だが、それに取り組むしかない。

週刊朝日  2019年10月11日号

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら