以来、五十有余年、これは自慢だが、わたしがあがった役満は、四暗刻(スーアンコ)と国士無双と大三元がそれぞれ約百回、字一色(ツーイーソ)と四喜和(スーシーホー)が約十回(ちなみに、大三元四暗刻と大三元字一色のダブル役満も数回ある)、九蓮宝燈(純正ではない)が二回、地和(チーホー)が二回と、珍しいところでは清老頭(チンロートー)が一回ある。清老頭は四人打ちで、雀荘のマスターが日付と名前を壁に貼りだしてくれた。

 そうして、極めつきの役満が、学生のときに達成した八連荘(パーレンチャン)で、これは八回つづけてあがりつづけること。当時はハコ割りの“飛び”がなかったから可能だった。

 そう、わたしが八連荘をあがったときは、よめはんが後ろで見ていた。「こんなにヒキの強い男はほかにおらへん」と、よめはんはいたく感動し、わたしをものにすることを決意したと、遠いむかしに聞いたような憶えがある。

週刊朝日  2019年9月27日号

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黒川博行

黒川博行

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

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