具体的には、どういうことなのか。どの国でも、輸出企業の「自主管理」が義務づけられており、自主管理が輸入者との関係のなかでいい加減になされ、不審な取引が繰り返され、ずさんな管理になっていれば、輸出国としては放置するわけにはいかない。韓国では、それが公然と行われていて、日本が今回の措置を取ったのは当然だ、というのである。

 さらに、日本政府は、韓国を「ホワイト国」から除外することを決めた。文政権になってから不適切事案が発生していて、日本側が何度意見交換を求めても一切応じず、これでは信頼関係が崩壊し、ホワイト国から外さざるを得ない、というのである。だが、この措置は、韓国にとって致命的である。

 これらの措置を考え出したのは、どうやら経産省のようだ。徴用工問題などの報復措置ではないと説明できて、しかも韓国に大きな打撃を与えることができる。安倍首相は「グッドアイデア」だと捉えたのであろう。だが、この措置は、直前まで外務省を外していたのである。知れば反対すると考えたのであろうが、アメリカにも知らされていなかった。

 そして、日本側が強硬措置を取れば、韓国側は、よりエスカレートして対立はどんどん激しくなる。韓国は、ついに日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄すると発表した。こうなると両国は断絶状態となり、明らかに両国にとって大きなマイナスである。

週刊朝日  2019年9月6日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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