終戦直後を知るイチ押しのマンガ「あれよ星屑」 作者が語る男同士の絆「ブロマンス」とは?

2019/08/18 10:30


「戦没学徒兵の手記を集めた『きけわだつみのこえ』に、宮野尾文平という学生詩人の詩が載っています。教育隊の元・天文台勤務の教官が兵隊を集めて星座の講釈をする情景を詩にしたものに、『そばにはあれよ 美姫カシオペヤ』という一節があるんです。漫画のタイトルをひねっているときは忘れていたんですが頭のどこかに残っていて、それがタイトルにつながったんだと思います」

 2013年8月の連載開始第1話では、初長編のプレッシャーにぶつかった。

「なかなかネームに入れず苦労しましたね。第1話をどうしたらいいのかわからず、どんなことを描いたら1話目として納得させられるんですかと、編集さんに助けを求めました」

 主役の2人の描き方も新たな挑戦だったという。

「黒田の三枚目キャラは、性格も人物像も圧倒的に描き慣れているので苦労は一切なかった。でも、川島のハンサムキャラが……。三枚目キャラを輝かせるためにハンサムキャラを描いたことはあったのですが、両者の魅力を同列に描くのは初めてで、難しかったです」

 作品の特徴としては、男同士の絆を描いた「ブロマンス」も挙げられる。ブロマンスとは、ブラザーとロマンスを組み合わせた造語ともされる。

「まずは女性にブロマンスものを読ませたい、という思いがありました。ブロマンスは男性ウケの方が強いジャンル。ハードボイルドと呼ばれるものには、ブロマンスの要素もあるのではないでしょうか。ハードボイルドにはもちろん女性の読者もいて、ガンアクションや組織ものにグッとくる女性もたくさんいる。BL(ボーイズラブ)の読者ともリンクしやすいのも承知していますが、ブロマンスという言葉を使うことでグッと開かれたものになる。さらに、ミリタリー要素を入れることで男性読者にも波及したいと狙っていました。結果的にどちらにも受け入れてもらえたのではないでしょうか」

 完結したことで、漫画家や編集者ら専門家がこぞって太鼓判を押すブロマンスものの秀作として注目された。全巻に重版がかかり、いまも売れているという。残虐な場面や性的描写もあり、“エログロ”の要素が強いとも指摘される内容だけに、幅広く読まれるのは異例だ。

 確かに直接的な描写もあるが、「闇」だけではない人間の生き様が感じられる作品。「令和」最初の夏、これまでとはひと味ちがう戦争の振り返りをしてみよう。
(本誌・緒方麦)
※週刊朝日オンライン限定記事

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