さて、お隣・韓国。文在寅大統領は就任当初から北朝鮮には融和政策をとっている。朝鮮半島で「終戦宣言」「平和協定」が結ばれることが悲願だ。また、南北交流の象徴の開城工業団地や金剛山観光の再開を強く望むが、こればかりは北朝鮮の「非核化問題」が解決しなければ行えない。

 しかし、北朝鮮が核を放棄することはあり得ないという見方が大勢だ。金委員長の最大の目的は体制維持で、そのために核保有は必須条件。米国とも核保有国への交渉に持ち込むとみられている。

 北朝鮮は米国から制裁緩和を引き出すことを最優先としているが、その先にあるのが日本との関係だ。経済立て直しの資金調達先として浮上する可能性が高い。小泉純一郎元首相が2002年9月に訪朝したときは北朝鮮では「100億ドルの資金が入る」と期待が膨らんだそうだが、今は200億ドルとも。北朝鮮は、徴用工問題では韓国にエールを送るが、これは後で日本と交渉し、多額の賠償金を引き出すためとみられる。

 それぞれの思惑が絡み、令和時代の北東アジア情勢はさらに波乱を含んでいる。(菅野朋子)

週刊朝日  2019年8月16日号‐23日合併号