帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
鰹のたたき (c)朝日新聞社 (※写真はイメージです)
鰹のたたき (c)朝日新聞社 (※写真はイメージです)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「値千金」。

*  *  *

【ポイント】
(1)季節の変わり目は心がときめく
(2)季節の移ろいを感じるのには値千金の価値が
(3)季節の移ろいを味わえば日々が充実する

 季節の変わり目ではいつも心をときめかせています。空気の匂いが変わって、そこはかとなくもののあわれを感じるのと、晩酌の友に新しい季節のものが登場したときの「おっ!」といううれしさが何ともいえないのです。

 例えば、初夏になって鮮やかになった木々の緑はいいですね。

 渭城の朝雨軽塵をうるおし 客舎青青柳色新たなり(王維)

 さらに夏といえば、鰹です。ここのところ、毎日のように晩酌に鰹が登場するので、うれしい限りです。

 そして秋は、抜けるような青さの北京秋天が目に浮かびます。

 秋深き 隣は何を する人ぞ(芭蕉)
 柿くへば 鐘が鳴るなり法隆寺(子規)

 旨いのは鮪の刺し身ですね。鮪はDHAを多く含んで認知症予防のエースであることを知ると、さらにおいしさが増します。

 冬。これは張継の「楓橋夜泊(ふうきょうやはく)」でしょうか。

 月落ち烏啼いて霜天に満つ 江楓漁火愁眠に対す 姑蘇城外の寒山寺 夜半の鐘声客船に到る

 晩酌の友となると、生牡蠣、河豚刺し、鮟鱇鍋、そして大根に白菜と多士済々です。

 私の大のお気に入りは静岡県富士市の料亭「ふじ万」で教わった雪鍋です。大根おろしを満たした鍋に豆腐を入れて火にかける。やがて大根おろしが透明な液体になり、豆腐が踊り出したところを掬(すく)って酢醤油につけて食べるのです。じつに旨いうえに、身体の中心から温まってきます。これがあるから、冬の晩酌は楽しみなのです。

 春一番はなんといっても杜牧の「江南の春」ですね。

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帯津良一

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帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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