萩尾:「週刊マーガレット」では『ベルサイユのばら』(池田理代子)とか『エースをねらえ!』(山本鈴美香)、「りぼん」では『アラベスク』(山岸凉子)とか、もうちょっとあとになると「花とゆめ」で『ガラスの仮面』(美内すずえ)とか。

林:『ガラスの仮面』はまだ続いてますよね。なんかすごいな。70年代って少女漫画の黄金期ですね。漫画と小説が共存共栄してるすごくいい時代だったような気がします。

萩尾:そうですね。文学、漫画、映画、皆さん同じように愛してくださって。

林:そしていよいよ『ポーの一族』の連載が始まるわけですね。美少年が、これでもか、これでもかとキャラクターを変えて出てきて。

萩尾:はい。美少年を描くのが楽しくて楽しくて(笑)。

林:でも、こんなにヒットすると思ってました?

萩尾:いや、ぜんぜん思ってないです。サブ作家だから、「ページがあるだけでうれしいな」という感じで、当時は毎回31枚だったか、描かせていただきました。それと、編集の方針もあれこれ変わるので、いつクビになるかわからないんです。

林:いつぐらいから騒がれ始めたんですか。

萩尾:単行本が出てからです。74年ぐらいに小学館の少女漫画部門で初めて単行本を出すことになって、『ポーの一族』の1巻、2巻、3巻が1カ月おきに出たのかな。編集者が私に「3万部刷る。1年ぐらいたてば売れるんじゃないかな。もし売れなかったら、原稿料はお金の代わりに単行本で払うから」って。

林:そんなのひどいなぁ(笑)。

萩尾:「単行本をもらってどうすればいいんですか」って聞いたら、「池袋の駅の地下で売ったら?」って(笑)。冗談だろうけど、それぐらい売れないだろうという雰囲気だったんです。そしたら発売して3日で3万部が売り切れたというんで、それで編集が「あれ?」と思ってくれたんです。

林:今までトータルでどのぐらい売れたんですか。何百万部とかですよね。

萩尾:わからない。何十万部は売れたと思うんですけど。

林:いや、絶対に100万部単位だと思いますよ。萩尾先生は印税の通知が来ても見たりしないんですか。

萩尾:見るんですけど、数字は覚えられないんで(笑)。

林:私も数字が嫌いだけど、このごろは「何この数字。なんでこんなに印税少ないの。何かの間違いじゃない?」って怒りながら見てますよ(笑)。話を戻して、そのあとはガンガン大ブームになったわけですね。

次のページ