そして、6月には麻生太郎金融担当相が金融庁に諮問した、65歳の夫と60歳の妻が30年生きると2千万円が必要になるという高齢者の資産形成についての報告書のデータに関して、国会で野党に追及され、「報告書に問題があり、受け取りを拒否する」と宣言した。だが、この報告書では、別のページに、このケースでは夫婦は約2500万円の貯蓄がある、と明記されているのである。

 麻生氏は、おそらく報告書をまったく読まないで、「受け取りを拒否する」と言ってしまったのだろう。私が、自民党の幹部数人に、「麻生氏はまったく間違っている。撤回させたほうがいいのではないか」と言うと、誰もが「田原さんの言うとおりだが、担当大臣に発言を撤回せよ、とは現状ではとても言えない」と答えた。

 これが、現在の自民党の大問題で、森友・加計問題あり、厚労省の統計不正問題ありと、少なからぬ自民党議員たちが思っているはずだが、それが言えなくなっているのだ。

 自民党は、自由で民主的な党ではなくなりつつある。だから、野党、そして国民を軽んじる安倍内閣の態度に議員たちは何も言えない。となると、私たち国民が言うべきことを声を大にして言わなくてはなるまい。

週刊朝日  2019年7月26日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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