ゲスト参加したカリブ系のローラ・マヴーラが作詞、ヴォーカルで加わった「ブルー・スカイズ」は、9分を超える本作でのハイライト曲。スローなジャズ・テイストによる演奏をバックに、ローラがしっとりとした歌を聴かせる。途中からワイルドなブルース・ロック調へと変化。カルロスのエネルギッシュなギター・ワークに息をのむ。

 R&B/ソウル・テイストの「パライソス・ケマードス」での伸びやかなギターもファンを喜ばせるに違いない。陽気なカリプソ調の「ブレイキング・ダウン・ザ・ドア」は、ライヴで盛り上がりそうだ。

 カルロスのハード・ロック・ギターに、妻でドラマーのシンディ・ブラックマンのソロなどを織り込んだ「カンドンベ・クンベレ」はラテン・ロックとアフリカ音楽を融合させ、本作の意図を感じさせる。

 この新譜でブイカとの共作による新しいオリジナルを手掛け、サンタナ本来のラテン・ロックやジャズ、フュージョン的要素を加味したスタイルを生み出した。

 ベスト・セラーとなり、グラミー賞9部門で最優秀賞を得た『スーパーナチュラル』から20年。サンタナが、今なおエネルギー全開であることに興奮を覚えずにはいられない。(音楽評論家・小倉エージ)

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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