カルロス・サンタナ(左)とブイカ
カルロス・サンタナ(左)とブイカ
●サンタナ『アフリカ・スピークス』 コンコード/ユニバーサル UCCO-1207
●サンタナ『アフリカ・スピークス』 コンコード/ユニバーサル UCCO-1207

 半世紀前、ウッドストックのロック・フェスティヴァルに出演し、デビュー・アルバム『サンタナ』で聴く者たちに衝撃を与えた。そんな語り継がれるバンドが、アニヴァーサリー・イヤーの今年6月、『アフリカ・スピークス』を発表した。テーマはずばり“アフリカ”だ。

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 「サンタナ」のリーダー、カルロス・サンタナはメキシコ出身。米国との国境の街ティフアナで暮らし、耳に届いたカリブの音楽、さらにブラジル音楽、アメリカのR&Bなどから“アフリカ”を感じとっていたと明かす。そもそもアフリカ音楽に関心を抱いていたわけだ。

 実際、アフリカ音楽に取り組もうと考え始めたのは、1988年、欧州公演の際にパリでアフリカ音楽のCDを100枚あまり買い込んでからのこと。曲を吟味してプレー・リストを作り、それらを“ひな型”としてアイデアを練ってきたという。

 ヒップ・ホップやカントリー、ポップスを手掛けてきたリック・ルービンに制作を依頼。リック所有のスタジオでわずか10日で49曲を録音したという。今回収録されたのはボーナス・トラックを含め13曲だ。

 スペインのマジョルカ島出身の歌手、ソング・ライターのブイカが起用された。ギニアからマジョルカに政治亡命した両親のもとに生まれたブイカは、フラメンコをベースに活動をはじめ、ジャズ、ソウル、レゲエ、ヒップ・ホップなどの要素を取り入れたスタイルだ。ザラッとした乾いた感触のある歌声、インパクトは強烈で、そんな彼女は作詞とヴォーカルをまかされた。

 カルロスとブイカによるオリジナルは2曲のみ。オリジナルの曲名や創唱者が明記されているのもあるが、作詞こそブイカだが曲の大半は改変したもので、原曲作曲者の名前も併記されている。

 アフリカこそ“文明のゆりかご”というナレーションで始まる表題曲「アフリカ・スピークス」。早々にカルロスのギターとブイカが掛け合いを聴かせる。「ヨ・メ・ロ・メレスコ」は、70年代のロック風で、プログレ風味を取り入れたもの。テンポ・アップしてからのカルロスの超絶的なギターが、往年の彼を思い起こさせる。

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小倉エージ

小倉エージ

小倉エージ(おぐら・えーじ)/1946年、神戸市生まれ。音楽評論家。洋邦問わずポピュラーミュージックに詳しい。69年URCレコードに勤務。音楽雑誌「ニュー・ミュージック・マガジン(現・ミュージックマガジン)」の創刊にも携わった。文化庁の芸術祭、芸術選奨の審査員を担当

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ラテン・ロックとアフリカ音楽の融合