民主党政権時代も、第2次安倍内閣になってからも、これでは現実性がないということになって、ではどのように改革すべきかと思考を巡らせているのだというのである。

 そんなときに、麻生金融担当相の求めに応えて、金融庁がワーキンググループをつくって作成したのが問題の報告書だったわけだ。

 報告書にも問題点はあったと思う。

 だが、そんなものは担当相が受け取ってから問題点を点検して改正すればよいのである。自民党の何人かの幹部たちに、問題点の改正ぐらい簡単にできるのではないか、と問うと、誰もが「その通りだ」と答えた。

 麻生担当相は「受け取らない」と受理を拒否し、森山裕国対委員長は「報告書はもうなくなったわけだ。だから予算委員会を開く必要はない」とまで言ったのである。何て馬鹿なことを言ったのだろうか。そして、14日には金融庁が謝罪するという異常事態となった。

 明らかに担当相と自民党は“臭い物に蓋をした”わけだ。こんなわかりやすいことはない。嫌でも国民の安倍内閣への不信感は急増するはずである。そして安倍内閣を攻めあぐねていた野党にとっては願ってもないチャンスが到来したことになる。野党はこのチャンスをどう生かすのか。そして安倍首相はどのように対応をするのだろうか。

週刊朝日  2019年6月28日号

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら